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2024.06.07認知症患者へ有効な音楽療法とは?効果を最大化するポイントも解説

認知症患者の方への症状の軽減や癒しを目的に、音楽療法が注目されています。音楽療法で用いるさまざまなプログラムなどがあり、患者さんの状態や目的に応じたものを選択することが重要です。今回の記事では、認知症患者の方への音楽療法の有効性や音楽療法の実践方法、音楽療法の効果を最大化するためのポイントを解説します。

認知症患者における音楽療法の重要性

音楽療法とは、音楽の持つ特性を活用した対象者を良い方向へ導いていくものです。年齢や性別、障害の有無を問わず幅広い方々を対象に音楽療法が実施されています。

音楽療法は認知症患者の方へも有効性があることで注目されています。ここでは認知症患者における音楽療法の有効性について解説します。

音楽療法が心身に与える影響

音楽療法を実践することで、健康の維持、心身の障害の機能回復、生活の質の向上、問題行動の改善などへの効果が期待できます。たとえば心身の障害によって発語による意思疎通が難しい方でも、音楽を介すればコミュニケーションを取りやすくなります。子どもなら、音楽を通じて成功体験や自己肯定感の向上といった心の発育面で有効性が認められています。

音楽療法で期待できる、具体的な効果には以下のものがあります。

・不安や痛みの軽減

・精神的な安定

・自発性・活動性の促進

・身体の運動性の向上

・表情や感情の表出

・コミュニケーションの支援

・脳の活性化

・リラクゼーション

非薬物療法としての音楽療法の効果

認知症の方への音楽療法は、非薬物療法のひとつとして効果があると言われています。たとえば音楽を聴く、好きな歌を歌う、楽器を鳴らす、さらに昔の歌を歌い、その頃の事を思い出すことで脳の働きや身体の動き、発声が促されます。認知症によって感情の乏しい方や自発性の低い方でも、自然と表情がやわらかくなったり、曲に合わせて体を揺らしたり、といったことが見られるでしょう。また、歌いながら楽器を鳴らすといった2つの動作を同時に行う(マルチタスク)ことで、認知症の進行を抑えることに効果があると言われています。

歌や楽器演奏を通じた脳への刺激

音楽療法が認知症の方へ有効な理由には、音楽の持つリラクゼーション効果のほか、歌や楽器演奏が脳へ刺激を与えることがあります。

楽器演奏は、曲を聴きながら手元を見る(たいこを叩くなど)・手を動かす(鈴やマラカスなど)・自分が出した音をきくなど複数の動作を同時に行うことで視覚野や前頭前野、頭頂葉、運動野、聴覚野といったさまざまな脳の領域が活性化されます。

音楽療法の実践方法とバラエティ豊かなジャンル

音楽療法にはさまざまなプログラムがあり、対象とするその方に合うものを選択することが重要です。音楽療法の具体的なプログラムや実践方法について解説します。

音楽療法のプログラムの例

音楽療法には、大きく分けて受動的音楽療法と能動的音楽療法があります。受動的音楽療法とは、音楽を聴く、歌の情景や歌詞をイメージするといった受け身的なものです。能動的音楽療法とは、歌を歌う、楽器を演奏する、音楽に合わせて身体を動かすなど自らが動くものです。

おひとりでもできる音楽療法

音楽療法には、ひとりで行うこともできます。対象者の好みや状態に合わせた曲や内容の選択が可能です。寝たきりの方ならベッドサイドで、集団行動が難しい方なら施設などの個室で、外出が難しい方なら自宅で、といったように、対象者の方に応じた対応が可能です。

音楽療法の専門家によるサポート

音楽の持つ効果が注目され、音楽療法を専門に提供する音楽療法士が誕生しました。音楽療法士の持つ役割や音楽療法を提供する施設やサービスについて解説します。

音楽療法士とその役割

音楽療法士とは音楽を通じて多角的な支援を行う資格職です。音楽療法士と名前の付く資格を出しているところは複数ありますが、代表的なのが一般社団法人日本音楽療法学会が認定する「日本音楽療法学会認定音楽療法士」です。3年以上の専門学校または4年制大学の認定校を卒業し筆記試験と面接試験、実技試験に合格すると取得できます。

音楽療法士は医療や福祉、教育の分野における各施設などで音楽療法のプログラムを実践します。病院や施設、在宅などで対象者の方の症状の緩和や健康の維持向上、介護予防を目的としたプログラムも提供します。

音楽療法を提供する施設やサービスの紹介

音楽療法は、音楽療法士のいる病院や施設、またフリーランスの音楽療法士に依頼し、施設や自宅・公民館に来てもらったり、音楽療法士のもとへ行ったりします。

実際の音楽療法体験

音楽療法は認知症の方への有効性が確認されているものの、「受けてみて効果があるか不安」といった方も多いかもしれません。認知症患者の方への音楽療法に関する最新研究の結果や、実際の音楽療法の様子やプログラムを受けた方の感想について解説します。

認知症患者の音楽療法に関する最新研究

認知症患者の音楽療法に関する研究は現在進行中であるものの、海外・国内ともに有益性があるとの報告があります。Vasionyte&Madison (2013)は、認知症患者に対する音楽療法の19編の論文より、音楽療法が感情、行動、認知、生理面で効果があるとの結果をまとめています。

Ueda(2013) は「RCTもしくは良くコントロールされた認知症患者への音楽療法の研究20絹 (651名)」により音楽療法は、不安 (anxiety) に対して中等度、行動異常に対し若干の効果を有することが示されました。

日本では、三重大学大学院医学系研究科 准教授の佐藤正之氏と三重県御浜町・紀宝町のヤマハ音楽研究所との産官学共同研究で、地域在住健常高齢者の認知機能の維持・改善を目的とした音楽体操による非薬物的介入(御浜—紀宝プロジェクト) を行っています。運動教室への参加を希望した80名を二群(音楽体操群、体操群)に分け、プロのインストラクターの指導のもと、音楽体操群には音楽の伴奏の付いた運動を、体操群には運動の内容は音楽体操群と同ーであるが音楽の代わりに太鼓で拍だけを付けた運動を週 1回各 1時間、1年間実施しました。介入期間の前後に神経心理検査を行い、認知機能の変化を検討したところ、音楽体操群で脳検査への有意な改善が見られました。

実際の音楽療法の様子

65歳でアルツハイマー型認知症を発症した女性に対して、自宅へ音楽療法士を招いて音楽療法を提供したところ、自分の名前も言えなくなっていた女性がピアノの伴奏に合わせて歌を歌い出した事例があります。特にこの女性は40年間ピアノ講師として活躍していた経歴があり、ビブラートを付けた歌い方で歌いました。小脳や大脳の奥深いところに蓄積された技術や記憶などが、音楽療法によって引き出された一例と言えます。

音楽療法に効果を最大限に引き出すためのポイント

音楽療法の効果を最大限に引き出すために覚えておきたいポイントを解説します。

聴力を確認する

認知症の方を含め、加齢により聴力が衰える人も珍しくありません。対象となる方の聴力を確認し、適切な音量にしたり、聞き取れる音域の曲を選んだりといった工夫が必要です。たとえば聴力の衰えによって音楽療法の音が聞き取れなかったり、高音が聞き取りづらかったりすると、せっかく対象者の好みの曲・思い出の曲を提供してもほとんど効果は得られないでしょう。

聴力を確認し、聞き取りやすい音量や高さを選ぶようにしましょう。

無理のない時間で行う

認知症の方は集中力が続かない、脳が疲れやすい、注意力が散漫になる身体が疲れやすいといった症状が出やすいです。音楽を聴いたり楽器を演奏したりといった楽しい時間も、長い間集中することは逆にストレスとなってしまうこと」があります。適度に休憩をはさむ、集中力が必要ないプログラムを検討する、といったように、無理のない時間で楽しめるプログラムを検討しましょう。

本人の好みに合わせる

認知症の方ひとり一人によって、好みの曲やジャンル、楽器、懐かしいと思う曲は異なります。対象となる方の好みを知り、その人に合う音楽療法を提供しましょう。

音楽療法で認知症患者の心と脳を健康に!

認知症の患者さんへの音楽療法の効果や、音楽療法の効果を最大化するためのポイントを解説しました。音楽の持つ脳を活性化させる効果は、認知症の症状の進行防止にも有益であるとの研究成果も出ています。音楽療法を受けて、認知症であってもその人らしい生活を送れるようにしましょう。

認知症の方への音楽療法を考えていらっしゃるなら、「Studio Päiväkoti」をぜひご検討ください。当スタジオにて、または高齢者デイサービスや特別養護老人ホーム・グループホームなどへの出張にて音楽療法をご提供しております。グループセッションのほか個人セッションやご自宅への訪問も可能です。



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